今回は日産自動車(7201)の2024年2Qの決算について、事業的、財務的な観点から分析を行なっていきます。
サマリー
まずは、前年同月比の売り上げ、営業利益の変動についてです。
項目 | 2023年 2Q | 2024年 2Q | 差分 |
売上高(億円) | 31,457 | 29,858 | ▲5.5 |
経常利益(億円) | 2,461 | 509 | ▲79.4 |
純利益 | 1,907 | -93 | ▲104.9 |
まず目に入るのが、経常利益の大幅なマイナスでしょう。
これが原因で純利益に至っては赤字の状態になってしまっています。
経常利益とは「売り上げから、原価、販管費を除いた利益」であり、売り上げの減少に対して経常利益の減少が大きくなっているのは、原材料費の高騰や、販売のパフォーマンス低下など、コスト増加要因が発生していることを意味します。
では、経常利益がこれほど大きく落ち込んだ原因はなんなのでしょうか。日産のIR資料を元に紐解いていきます。
23年度上期に対して、最も大きな差分は、販売パフォーマンス(販売費用)の項目です。
こうなってしまった原因は、日産の主力モデルであるローグの24年モデルの開発の遅れです。他社が24年モデルを発売する中、日産は23年モデルを売り捌かなければならない状況に陥ってしまっていました。
ここで日産がとった手法は「ディーラーへのインセンティブの上乗せ」でした。つまりディーラーに対して追加で販売賞歴金を払うことで、顧客への特典付与などをし、なんとか23年モデルを売り捌こうとしたわけです。
結果その費用が営業利益低下の要因として大きくのしかかってきてしまいました。
・今期売り上げは5%減 経常利益は80%減
・経常利益減少の要因は、新モデルの開発の遅れによる販売コスト(インセンティブ)の増加
今後の施策
この厳しい状況に対して、日産が打ち出したのは以下の2つです。
人員削減による利益確保
株式会社としてまずなんとしても避けるべきは通期での赤字です。このため日産は「全世界で9000人」という大規模な策に踏み切りました。
その他、原価・研究開発費の見直しなど、赤字回避のためのさまざまな策を打ち出しています。
ブランド力の強化・開発期間の短縮
今回の赤字の原因となったのは、「開発期間が長期化したことにより、旧モデルを薄利で売り捌かざるを得なくなったこと」です。
ここに対する対策としても、開発期間短縮などの策を打ち出しています。
値段ではなく、ブランド力と品質で勝負できる状態に戻していこうという姿勢です。
今後の対策は「人員削減による販管費減少」と「開発期間短縮およびブランド力の強化」
株価の反応
2024年11月7日の発表を受けて、株価は412円 => 370円と42ポイントも下落しました。
現在の状況の厳しさがそのまま株価に表れた形です。
株価は42ポイント下落
今後の予想と投資判断
日産の今後ですが、以下の観点でかなり厳しいと言えます。
生産規模の縮小
今回の大幅な人員削減は、日産が「現在の規模で適切な利益水準を保ちながら売り上げを伸ばすのが厳しい」という判断をした証拠です。
利益水準を適切に戻し、再び販売規模を現在の水準に戻すまでには、おそらくかなりの時間を要することでしょう。
北米での販売不振
日産にとって逆風になり得るのがトランプ政権の発足です。
2024年11月9日現在、次期アメリカ大統領として当選が確実と見られるトランプですが、その政策の中に「EV補助の廃止」が含まれています。
日産はEVを主体として販売戦略を進めており、ハイブリットラインナップを持っていないため、売り上げの実に25%を占める北米で、かなり厳しい戦いを迫られることになります。
現在、株価はかなり安い水準ですが、日産が再び成長軌道に戻せるか、適切な見極めをして、慎重に投資を行うべきでしょう。
・トランプの当選が、ハイブリットラインを持たない日産には逆風に
・株価は割安だが、投資判断は慎重に
コメント